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ペインティング作品『読めるかな』(2017年)が販売中

アートのECサイト「YOUANDART(ユーアンドアート)」で販売中の藤川さきさんの作品というのは、ペインティング作品 『読めるかな』(2017年)の1点だ。(2022年4月23日の本稿執筆時点)
↓  ↓  ↓
https://buy.and-art.co.jp/products/saki_fujikawa-can-you-read
(なお、同サイト上の他の3点は2021年の作品ですべて完売済になっている。)

最近人気が出てとにかく入手困難

藤川さきさんの作品について言えば、最近、LIGHT HOUSE GALLERY(両国)にて開催されていた個展『全ての果実には種があったらしい』(2022.2.12~2022.2.27)での作品が、全て抽選販売となったことを知り、やはり遂にこういう時がきてしまったかと感慨深いものがあった。作品リストをギャラリーから取り寄せることで、会場に足を運ばずとも購入の応募が可能ではあったのだが、あくまで抽選販売であるため、必ずお迎えできるとは限らない状況だ。

とにかく最近の藤川さきさんの作品は入手が困難との印象がある。アートのECサイトはいくつもあるが、そのうち有名なtagboat(タグボート)に出品されていた初期作品についても現在すべて完売 の状況だ。また、以前は、作家が自らのECサイト(現在は停止中)でドローイング作品を販売していることもあった(これは今や知る人ぞ知る話かもしれない)が、記憶する限り全作品が完売していたと思う。

『読めるかな』(2017年)について

さて、今回販売中のこの作品は、わたくし自身、展示会場で生で実物を鑑賞したことがある(と記憶している)。ひときわ目を惹いた作品だった。(イラストではなく)絵画の中にあえて文字が登場する意外性もなかなかインパクトがあった。

藤川さき作品の魅力とは

門外漢の私が個人のブログでアート作品の魅力を語るのは大それたことであるが、読者のなかには藤川さきさんのことをはじめてお知りになる方も、現代アートについてお詳しくない方もいらっしゃるだろうから、この記事では私の考える藤川さきさんの作品の魅力について3点に絞って語ってみたい。

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1. 多作にして希少

藤川さきさんは多作な方であると聞いている。これは以前ある同人画家から聞いた評だ。そういうと作品の希少価値が下がると勘違いする方もおられるかもしれないので、ここでハッキリ認識を正しておきたい。 有名な例を挙げればパブロ・ピカソは極めて多作だったのであるが(彼の長い生涯を考慮しても5万に及ぶ作品数は圧倒的だ)、ピカソの作品がありふれていると思う人はいないことだろう。それは、ピカソの作品を求める人が圧倒的に多いからである。現在の藤川さきさんの作品についても全く同じことがいえる。1点モノ作品を所有したいコレクターの人気に対して全くもって供給が足りていないのである。
もとより「1点モノ」はそもそも世界にただひとつしか物理的に存在しないので希少であることは言わずもがなであるが、さらに藤川さきさんの作品を希少にしているもう一つの要素が制作のスタンスにある。過去に同じようなことを試みたことのある作品は出さないことにしていると聞いたことがある。つまりある公開作品のテーマ×表現は、藤川さきさんにして最初で最後(ある意味一回性のもの)ともいえる。そうなると「過去作品」も意味を持ってくる。今回ご紹介した『読めるかな』(2017年)も、テクニカル的には5年前の達成とはいえ、いまの新作に連なる藤川さき作品群という「ブロックチェーン」の一ブロックとも位置づけられるだろう。

2. 移ろいゆくスタイルの変遷がエキサイティング

パブロ・ピカソは、時代によって作品のスタイルが全く異なっていった。藤川さきさんの作品も、さすがにピカソほど極端ではないが、やはり作品のスタイルが変遷をたどってきた。私の知る最も初期のころの藤川さき作品といえば、輪郭がやや曖昧なタッチのドローイングが多かったように思う。やがてほぼ100%一人ないし複数人の女性がわりとハッキリとした輪郭をもって画面の中心に置かれるスタイルになる。とはいえ描かれる女性はテーマの主人公ではなく、あくまで素材であり、作品全体を通して精神や思想が追及されている。ドローイングはもともと定評があったが、やがて紙やカンバスというフォーマットを飛び出し、割られたガラスや石に直接描くような作品も生み出された。そういえば砂絵なんかもあった。そして2022年の今はやや厚塗りのペインティング作品が多いようだ。変わらないものといえば意味深なタイトルであろうか。ところがタイトルで何やら一人合点したところで、作者本人の解説を聞いてみるとまるで違っていたということもあるので要注意なのであるが。これはもはや主観的な好みの問題かもしれないが、最初に「確立」してしまったテーマにひたすら磨きをかけていくだけの制作スタイルよりも、たえまなく世界を拡張していく探求の過程につきあうほうがよっぱどエキサイティングな体験なはずだ。藤川さきさんの作品が一つまた一つと生み出されていく瞬間に、世界に飛散し浮遊しているなにものかがぎゅっとカタチにされ、世界のエントロピーが低減する物音が聞こえてくるのは私だけだろうか(全く何をいっているんだか…)

3. ビジュアルの迫力と美

現代アートの世界では、コンテクスト(文脈)がかなり幅を利かせている傾向があるが、藤川さきさんの作品は、意味深なタイトルもさることながら、作品を生(なま)で目の前にしたビジュアル体験が素晴らしい。具体的には、色彩の個としての美しさとそれらが群像となったコラボレーションが織りなす美しさ、リズミカルで力強い塗りの質感、大胆な構図がもたらすあっと驚く画面の効果などである。こんな食レポのようなありきたりな表現を並べるのは野暮かもしれない。とにかくネットで見る作品の写真と実物との間にいちじるしい印象のギャップがあるはずなので、もし機会があればぜひ個展やグループ展に足を運びご自分の目で確かめていただきたい。

現代アートの価値とは

今回取り上げたのは、藤川さきさんの作品についてであったが、上記3点のポイントは、現代アート作品の価値を考える上で共通したポイントだと考えている。アート作品の購入にあたっては、投資的な観点ではなく、あくまで作品を鑑賞したあなたにとってそれがどのような説得力を持ったかという観点を中心に据えて検討いただきたい。また物理的な作品である以上作品を保全・維持していく覚悟をもつことも必要であろう(イグジットの際はギャラリーに相談するというのが望ましいようだ)。上述したとおり、できれば可能な限り生(なま)の作品をご覧になることをお勧めしたい。

今回は当ブログはじめての現代アート関連記事となり、これまでの読者の皆さまにおかれては驚かれたかもしれないが、当ブログはそういう「総花的」な情報発信ブログなのである。

YOUANDART(ユーアンドアート)の藤川さきさんプロフィールページ

余談1

藤川さきさんはLINEのスタンプも出されている。なんと120円で買える「藤川さき作品」である。
↓  ↓  ↓
LINE STORE | クリエーターズスタンプ | はちべえのやわらかな日常 藤川さき

誰かに飯をごちそうになった時に「ATM」というスタンプを使ったらヒンシュクを買ったことがあるので使い方には十分注意されたい。

余談2

ちなみに、今回ご紹介したECサイト「YOUANDART (ユーアンドアート)」は、1万円からバンクシーやピカソの作品の共同オーナーになれるWebサービス「ANDART(アンドアート)」と同じ株式会社ANDARTが運営元である。代表取締役CEOの松園詩織氏はサイバーエージェント出身の方だ(面識はない)。ANDARTの出品1作目はKAWS(カウズ)の作品だったが、初日にオーナー権を購入して今でも時々オンラインで眺めていたりする。(実物の展示のオーナー会もやっているのだが行ったことがない。のっけからブラックフォーマルのドレスコード指定で招待が来てビビった人も多かったと思う。)

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