COMSAでNFTを落札してみた。
XYM関連で、Symbolを使ったオールオンチェーンNFT(フルオンチェーンNFT)のNFTマーケットプレイスである COMSA (https://comsa.io/) には以前から興味があったが、このたびTwitterのタイムライン上で、ある興味深いNFT作品を見つけたことをきっかけにアカウントを取って入札してみた。なんと最低単価が1XYMで出品されていたが、結果、無事落札することができた。
そのNFT作品はこちらである。(画像クリックでCOMSA作品ページにリンク)
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※本ブログ掲載については作者から許可をいただいております。
NFTのどこがそんなに面白いのかとお考えの方もいらっしゃるかもしれないが、いざ購入してみるとなかなかどうして熱い感情が沸き起こる体験だったので不思議なものだ。
COMSAの魅力とは
本稿でいうCOMSAは、テックビューロ株式会社が運営するNFTマーケットプレイスの方である。COMSA(CMS) というトークンがあったり、COMSAで、CMS:XYMで支払いができたり等ちょっと名前がかぶっているのがややこしい。
このCOMSAのNFTは、代表的なNTFマーケットプレイスであるOpenSeaのようにコンテンツ画像のURLのようなメタデータだけがブロックチェーンに刻まれるタイプではなく、オールオンチェーンNFT(フルオンチェーンNFT)といって、ブロックチェーン上に作品本体のバイナリデータが書き込まれる。ある意味、正真正銘のNFTと言ってよい。Symbolの目玉機能のひとつである。
COMSAのNFTを購入すると何を所有することになるのか
NFTを購入したら作品そのものが自分のモノになると思ったら大間違いなようである。
ここで、COMSAの利用規約を見てみよう。(引用は2022年5月16日現在)
第16条(権利帰属) 1 当社ウェブサイト及び本サービスに関する所有権及び知的財産権は全て当社又は当社にライセンスを許諾している者に帰属しており、本規約に定める登録に基づく本サービスの利用許諾は、当社ウェブサイト又は本サービスに関する当社又は当社にライセンスを許諾している者の知的財産権の使用許諾を意味するものではありません。登録ユーザーは、いかなる理由によっても当社又は当社にライセンスを許諾している者の知的財産権を侵害するおそれのある行為(逆アセンブル、逆コンパイル、リバースエンジニアリングを含みますが、これらに限定されません。)をしないものとします。
何ともぼやっとした書きっぷりであるが、「当社にライセンスを許諾している者」というはNFTのクリエーターのことを指すのであろう。一方「当社」(=テックビューロ社)自身はコンテンツについて使い放題なようなので、あきれるほど「当社」に都合によい条文であるが、NFTの購入者(COMSAのサイトでは「ホルダー」と説明されている)はというとどうやら知的財産権の主張はできないようだ。つまり、ホルダーは、あるひとつのNFTプラットフォーム(またはブロックチェーン上)内におけるあらかじめ定義された数量(この場合1個)のトークンとしての「所有権」を「購入」し、二次販売できる権利を獲得するに過ぎないのである。「過ぎない」と言ったものの、作者ではない第三者でありながら、作品の日本円または暗号資産による価格にコミットしているという厳然たる事実は残るので存在感はあるにはある。このあたりの微妙なさじ加減というか機微というかを敏感に感じ取れるセンスがCOMSAのNFTを楽しめるか否かを左右するのではないかと思う。
NFTの課題
よく耳にする課題とは
さて、NFTの普及を阻むハードルとしてネット上にはこんな記事を見つけた。
CNET Japan 記事 NFTのマーケットプレイス「LINE NFT」が4月13日に開始 2つの課題を解消へ
COINPOST 記事 関心高まる「NFT」の未来像、乗り越えるべきハードルとは|TBCC2020
上記で挙げられているNFT普及を阻むハードル(重複あり)をまとめると
- 法規制が入るリスク
- NFTを入手するまでのステップが多い
- 大手のIP(知的財産)事業者の参入が進まないこと
- NFTの仕組みや価値が理解されないこと
ということであろうか。
これらについては、1.は別としてサービス提供側のはたらきかけや仕組み次第で解決できそうな課題である。ところが、今回COMSAでのNFT購入を通じ私が感じた課題点はそこではない。
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私が感じた課題
私が感じたのは次のような課題だ。
納税のための所得計算が厄介すぎ!?
NFTで売却益が出た場合、納税のための所得の計算方法が極めて煩雑になることは間違いない(2022年5月の本稿執筆時点で、NFTに特化した所得計算方法の明解な見解が出されているわけではないが、おそらく移動平均法または総平均法の雑所得扱いになるのだろう。それにしても、暗号資産(仮想通貨)取引所ならば、総平均法による年間取引報告書がかろうじて存在して計算に役立てられる場合が多いが、NFTマーケットプレイスはまだそこまで親切ではない。NFTを売買する利用者側にこうした計算の負担を強いる現状は、NFTの普及をかなり阻害しているといえよう。COMSAではXYMを使わせたいがために、クレジットカード決済にいろいろとデメリットを設定しているが、納税のための計算についてはクレジットカードによる日本円決済が断然シンプルで分かりやすい。
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クリエーターの年代層がミスマッチ!?
NFTは音声や映像作品もあるものの、絵画作品がメイン部分を占めている。ところが、クリエーターである「絵師」は、18歳未満が少なくないという特有の事情がある。イラストのマーケットプレイスのSkeb (スケブ)が、当初、未成年のアカウント作成を禁止していたにもかからず、保護者の同意があれば未成年のユーザも利用できるようにした(2021年7月時点)というのは未成年者層からの強い要請があったからであろう。NFTが暗号資産や二次販売の仕組みを伴う大人の仕組みであることを考えると、ターゲットとなるユーザ層との嚙み合わせが悪いことは否定できない。
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作品がブロックチェーンに半永久的に刻まれるのが重すぎる!?
COMSAは、フルオンチェーンであることが売りである。作品がブロックチェーンに半永久的に刻まれることにロマンを感じるのは理解できる。ところが、これ、よくよく考えると、重すぎるのでは?という感じもする。あなたはデジタルの絵画作品をインターネット上に発表した経験はおありだろうか。プロのクリエイターは日々そういう緊張感と向き合っているのかもしれないが、後になって振り返ってみて、中にはマイベストとして永久保存版にしたい作品もあるだろうが、これはちょっと駄作だったかな反省して取り消したい作品もあるだろう。出品したすべての作品が琥珀の中の化石のように閉じ込められるような形でブロックチェーンに刻まれるというのはなかなか重いと感じるのは考え過ぎだろうか。
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BANされるリスクへの意識過剰が表現を萎縮させる!?
NFTで問題となるのは、マネーロンダリング等の目的外の利用、循環取引や、著作権侵害などである。これらはもちろん規約で禁じられているが、実効性のある対策も同時に行う必要がある。
COMSAではアカウントの登録はゆるいものの、運営側が審査することで治安を維持している。またガーディアンという監視役も存在する。一定額以上の取引には電話認証が必須であったり、入札中にMosaic ID欄に「異議受付中」というちょっとコワい表現が現れることもある。COMSAとしては、ひたすらクリーンなマーケットプレイスを志向しているのだと思う。ただ、表現活動においてBANされるリスクを絶えず強く意識させられるのは、表現そのものを萎縮させるマイナス面が否めないだろう。程度の問題ではあるがポリコレ規制も行き過ぎると、プラットフォーム自体の敷居が高くなり過ぎてしまいそうな気がする。
おわりに(日本にとってNFTの普及・発展の環境整備は急務?)
私が上記の中で最も厄介だと感じているのはやはり「所得計算」である。ここは何とかもっとシンプルにならないものだろうか。日本は、もとより国土も小さく、天然資源も乏しく、昨今の少子高齢化ときたる人口減少を向かえている(イーロン・マスク氏によると日本は消滅するらしい)。自然災害リスク、隣国に大きく遅れをとっているデジタル化、多重下請け構造によるIT産業の生産性の低さ。コロナ禍を通じてあきらかになったインバウンド消費に頼ることの脆弱性。こうした状況の中、日本が「稼げる」隠し種は決して多くない。その中で、サブカルチャー含む文化や知的財産権、日本初のブロックチェーン技術や暗号資産などは有望ではないだろうか。(同じような意味でゲーム、アニメ、サブカルのコンテキストで日本が一定の存在感をもっているメタバース領域も有望と言われている) 私は個人的に、ゲームにはほとんど興味がなく、アニメもほどほどであるが、NFTを所有するわくわく感というのはなかなか心躍るものを感じたのは事実だ。(※個人の感想です。)何が言いたいかというと、NFTは現在はやくも下火といわれてもいるものの、SymbolのフルオンチェーンNFTの価値に対する理解と活用シーンは、これから海外を含めもっともっと増え広がっていくだろうとの予感がするということである。この記事で列挙したような課題について深堀りすること、こうしたNFTを普及・発展させる環境整備は急務といえるかもしれない。
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